Crosstalkクロストーク

Project Story
01

医療現場の「吸着事故ゼロ」へ
進化するMRI用磁性体検知器
「MAGGUARDⅡ」

医療の高度化が進む今、日本国内の医療機関では約8,000台(2022年現在)のMRI(磁気共鳴画像診断装置)が導入されています。その中で問題となっているのが「MRI撮影時の吸着事故」です。2014年に販売をスタートした『MAGGUARD』は、MRI撮影時の吸着事故を未然に防止するため、検査室へ入る際に磁性体をスクリーニングする検知器。2022年6月にはさらなる進化を遂げた『MAGGUARDⅡ』がリリースされました。プロジェクトストーリーではそんなMAGGUARDシリーズを手掛けるキーマンにインタビュー。ブランドにかける想いを語っていただきました。

加藤 伸輔
技術開発部 課長 2012年入社
加藤 伸輔
SHINSUKE KATO
電子部品メーカーから「ものづくりで人を助ける仕事がしたい」とフジデノロに入社。MAGGUARDのコア技術である磁気センサシステムなど放射線治療関係の技術研究および製品開発を担当する。他にも特注医療装置の開発や技術特許の出願などを行うことも。
伊藤 洋典
ヘルスケア事業部 主任 2015年入社
伊藤 洋典
HIRONORI ITO
高校卒業後にアメリカ・カルフォルニア州へ留学。大学に通いながらインターンで貿易を学び、帰国後 食品商社を経てフジデノロに入社した。ヘルスケア事業部では、海外営業と国内営業を兼任。十数カ国以上の国でMAGGUARDの販売代理店網を築く。

自社開発の「高精度磁気センサ」から誕生
現場の声を取り入れながら成長したMAGGUARD

自社開発の「高精度磁気センサ」から誕生
現場の声を取り入れながら成長したMAGGUARD

伊藤

私が入社した2015年はMAGGUARD販売初期の段階で、海外市場調査を終えていよいよグローバルに販路を広げていこうというタイミングでした。それよりかなり前から基礎研究は始まっていたんですよね?

加藤

はい。フジデノロではずっと以前から名古屋大学と共同で生体磁気計測の研究開発を進めていて、その過程で生まれた高精度磁気センサ(MIセンサ)を製品に応用できないかと模索していました。もともと当社は医療用ボーラス(がんの粒子線治療に使われる高密度ポリエチレン)の開発で医療現場とのつながりがあったので、そこから営業部が「MRI吸着事故」の話を聞いて、高精度なMIセンサが磁性体検知器に活用できるのではないかと開発を進めたのがきっかけです。

伊藤

医療施設の放射線科ではMRIの他にレントゲンやCTなどの装置がありますが、MRIは大きな磁場を作り出すことで患者様の体を撮影します。近年MRIはより高解像度な画像を得るための「高磁場化」が進んでいて、磁性体による吸着事故のリスクも高まっていました。ただ、ニーズがあったと言っても当社としてはゼロスタートの製品。初期開発時はどんな試行錯誤があったのですか?

加藤

医療現場には様々な設備や自動ドア、エアコンをはじめとする磁場発生源が数多く存在しており、そのノイズを拾わずに患者様の磁場変化のみを抽出する検知アルゴリズムを開発するのはとても大変でした。

伊藤

でもその努力の甲斐あって、MAGGUARDは精度の高い製品として医療現場に受け入れられたのではないかと思いますよ。「他社製品では誤検知が多発して使えなかった」というお客様にもMAGGUARDをお使いいただけているので。

加藤

ありがとうございます。MAGGUARDは使われる施設の環境ノイズに合わせた設置・設定を行う必要があり、伊藤さんをはじめ営業の方による設置環境や使用状況のフィードバックをもとに最適な設定をチューニングしています。シビアな磁場環境で使われる分、ただ設置さえすれば良い製品ではないんですよね。どう使われるかをこちらがしっかり把握し、相手にもしっかり理解してもらうことが大事です。

伊藤

MRI室への磁性体の持ち込みは、医療機器や電気機器の破損や故障、磁気カードなどのデータ破損につながる恐れもあります。磁性体の持ち込みによる画像の乱れが原因で、再撮影が必要となってしまうケースも少なくありません。だからこそ医療従事者の皆様にはMAGGUARDの特性や強みをしっかりと理解してもらいたいと考えています。例えば、今でも多くの施設で金属探知機が使われていますが、金属探知機では小さな磁石の見逃しがあったり、アルミなど磁性のない金属にも同じように反応してしまうことがある。こういった事実を伝えていくのも私たち営業の仕事ですね。

加藤

最近は磁性体検知器が、医療機関にようやく普通に認知されるようになってきましたね。以前と比べればかなり市場に受け入れられやすくなったのではないでしょうか?

伊藤

確かに私がMAGGUARDの営業を始めた頃は、そもそも診療放射線技師の方が磁性体検知器の存在を知らない人ばかりでした。医療業界におけるフジデノロの知名度も低かったので、啓蒙活動から地道にやっていったのを覚えています。私自身は現場のニーズが必ずある製品だと思っていましたので、コツコツと認知度を上げる努力をしていましたね。

加藤

MAGGUARDは当初スタンドタイプの「S」とウォールタイプの「W」の2種類があって、2年後に販売されたハンディタイプの「H」は現場のニーズから生まれたバリエーションでした。「自立式ではカバーしきれないケースがある」と伊藤さんがおっしゃって、そこからHの開発を始めました。

伊藤

基本的にMRIの前室に置いてもらう想定のMAGGUARDですが、既存の施設にプラスで置きたい場合は自立型のS。設置スペースが充分にない場合や病院の新設時に導入されるケースでウォールタイプのWをおすすめしています。手持ちできるHは、「患者様が車椅子やストレッチャーに乗った状態でも磁性体検知をしたい」という現場のニーズから生まれた製品です。MAGGUARDは正にお客様の声で成長しているシリーズと言えるのかもしれませんね。

さらなる進化を遂げた
「MAGGUARDⅡ」の
販売がいよいよスタート

さらなる進化を遂げた「MAGGUARDⅡ」の
販売がいよいよスタート

加藤

そんな現場からのフィードバックをもとに新モデルの研究開発を進めていたのですが、2022年6月にはいよいよ「MAGGUARDⅡ」が発売となりました。MAGGUARDⅡでは新たに3次元センサユニットを複数内蔵。センサの配置や検知アルゴリズムも大幅に改良し、さらなる広範囲化・高精度化を実現した自信作になっています。医療現場の環境は本当に様々なので、「誰が使っても同じように検知できる」チューニングにもかなりこだわりました。

伊藤

見えない工夫が至るところに込められていますよね。業界で唯一、三次元センサーを搭載しているところがポイントでしょうか。以前から医療従事者の方からも「Ⅱが出たら必ず導入したい」という声をたくさんいただいており、販売を心待ちにされている方もいらっしゃったので、新製品を広めていくのが今から楽しみですよ。

加藤

今回は、最初からグローバル市場もターゲットにした仕様になっていますね。

伊藤

国内はフジデノロのネームバリューで比較的販売しやすいのですが、グローバル市場はやはり競争の世界。複数の医療評価機関がそれぞれ医療事故を防ぐためのガイドラインを出しており、それらに対応する必要もあります。国によっては「MRIを設置する際はこういう磁性体検知器を導入するように」と具体的に指導しているところもあって、全てクリアにして生まれたのが今回の「Ⅱ」なんです。

加藤

新たに生まれ変わったデザインにも注目してもらいたいですね。見た目の良さはもちろん、機能性の高さと使い勝手の良さを兼ね備えたプロダクトデザインがさらに磨き上げられていると思います。「デザインとテクノロジーの融合」は当社自社製品が最も大切にしているコンセプト。ここには同席していませんがプロダクトデザイナーにも感謝したいです。

MAGGUARDシリーズを、世界の医療シーンを支えるブランドに

伊藤

慌ただしい医療現場において、人対人のコミュニケーションには限界があります。これからも医療従事者の方が運用に悩まされることなく、患者様に安心安全にMRI検査を受けていただける製品をお届けしていきたいです。現在MAGGUARDは国内外で400以上の施設でご使用いただいていますが、今後は病院でのMRI設置台数が多いアメリカやヨーロッパはもちろん、病院数が劇的に増えている東南アジアやインド、中国市場にも力を入れていきます。海外営業は英語が話せればいいという訳ではなく、異文化の人たちとどうコミュニケーションをとって、サポートするかが本当に大事。MAGGUARDは命に関わる医療機器なので、きちんと理解してもらえるよう啓蒙を続けていけたら嬉しいですね。

加藤

MAGGUARDはまだまだ進化の余地があると考えています。まだ構想段階ですが、将来的にはMAGGUARDをネットワークとつなげてIoT化を実現していきたいですね。検知データを自動解析し、ネットワークでいつでも共有できる仕組みが作れれば、現場の使用環境に合わせた最適化も一層しやすくなります。そうなってくると伊藤さんの負担が少なくなって、もっと頑張って営業してもらえるようになるのかな(笑)。今後もチームで一丸となって、MAGGUARDを医療シーンに無くてはならない製品に育てあげていこうと思います。

2022年4月取材

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